フィレンツェに感謝!

とにかく、毎日暑いですね。
言ってみても仕方がないのですが、外に出るとどうしても、そう口にせずにはいられない今日この頃です。
地球温暖化・・・というより、もはや”灼熱化”?という位に感じてしまいます(苦笑)。

そう言えば、フィレンツェ展覧会での滞在時も気温は35℃一歩手前程まで達していて、とても暑い毎日でした(その頃の欧州は全体にやはり例年になく暑く、6月だというのにパリやロンドンでも同じ位に暑かったと聞き驚いたものでした)。
今や”異常”気象が”恒常”となりつつあり、季節の感覚も昔ながらの感覚とは違うと、認識しないといけないのかもしれません。

体調の管理には、皆さまも本当にお気を付け下さい・・・

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さて、6/16付のこちらのページで、フィレンツェからの取り急ぎのご報告を致しておりましたが・・・
展覧会も、6/21をもちまして終了し、展示した作品たちも無事に日本へ戻って参りました。

現地で会場に居て頂いた係の方からのお話ですと・・・
イタリアの方が三割ほど、日本からの旅行者の方も多く一、二割ほど、残りは欧米アジア等から・・・と、世界中から観光でいらした方々にも絵を観て頂くことが出来、とても嬉しく思っております。

フィレンツェの会場では、2月の京都・高台寺さんでの展示よりも、京都を描いた作品を増やしました。
京都は、いわゆる”日本らしさ”を残している風景が多いですし、絵を通じて、海外の方が日本の美しさに興味を持って下されば・・・と思ったからです。

この度、ギャラリー・スペースを”会場に”とご協力下さいました「サンタ・マリア・ノヴェッラ」さんは、現存する世界最古の薬局として有名で、フィレンツェを訪れた人々が大勢立ち寄る、観光名所の一つにまでなっている所です。
今回、そういった意味でも良い場所をご提供頂き、大変にありがたいことでした。

かくいう私も、ずっと昔・・・30代にフィレンツェを訪ねた折に、初めて立ち寄らせて頂きました。
日本で言うところの”薬局”とは全く違う、立派で厳かな空気さえ漂う(800年の歴史を誇り、元々修道院として発祥した場所ですから然もありなんですが)、その佇まいと雰囲気に圧倒されて舞い上がりながらお土産を買ったと、記憶しています。

何しろ、14世紀には修道院の教会として使用されていた場所が現在は店舗として利用されているような、歴史ある立派な空間の中で、個展を開催頂けるなど・・・初めてここへ来た時には夢にも思っておりませんでした。

更には、今秋(11月頃と聞き及んでおりますが)、フィレンツェ・京都姉妹都市50周年を記念して新しいオーデコロンが、サンタ・マリア・ノヴェッラさんからお目見えするそうです。
その名もズバリ『Cinquanta(チンクアンタ)』、イタリア語で”50”という意味。
パッケージの横面に、私の絵が使われております。フィレンツェ、ミケランジェロの丘中腹に在る、両市友好の象徴である日本庭園「松籟庭園」を描いた作品です。

憧れを抱いていた老舗の、新しいプロダクトのパッケージに、自分の描いた絵が(小さいながらも)付いている・・・なんだか不思議な気分です。

こうして様々なご縁に恵まれ・・・フィレンツェは、私にとってやはり特別な街だ、と改めて感じました。
今回の滞在中に、ミケランジェロの丘の上から”屋根の無い美術館”と呼ばれる街の眺望を見渡していると、そんな感謝の気持ちがどんどん湧き上がってきました。

描き上がりホヤホヤの、油彩「フィレンツェ夕景」です。
スマホで撮りましたので綺麗に撮れていません。
現物は、秋から始まる巡回個展にて展示されますので、ご覧頂けましたら幸いです。

これまで様々な時間帯や季節に、何度もこの場所に足を運びましたが、中でも夕陽が沈む直前の光景は素晴らしく、胸を打つような美しさに街の全景が包まれます。

そう感じる人は多いのでしょう。上下に二段階になる展望台スペースとそこを繋ぐ広い階段は、大勢の人・人・人・・・でびっしりと埋まっていました。そして、皆が一様にウットリと夕陽を映すアルノ川を眺め、思い思いにカメラに収めています。

段々と太陽の位置は低くなって行き、山の端へと差しかかり下から欠けて、そのうち小さな点となり、フッと山影に完全に消えたその瞬間―――小さなどよめきと、どこからともなく拍手が起きて、どんどん広がってゆきました。まるで、コンサートや演劇の終演後に起こる喝采のように・・・
“良いものを見せてくれて、ありがとう”という、温かい気持ちを共有したひと時でした。

そんな感動の瞬間と、感謝と感慨と、自らの記念の気持ちも添えて、帰国後すぐに取りかかった「フィレンツェ夕景」という絵が、先日ようやく描き上がりました。
「ありがとう、フィレンツェ・・・」

笹倉鉄平

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