正に”アトリエから”です

以前、こちら(07年7月17日の『ただ今スケッチ中』)で、絵を描く現場でのスケッチの様子を、写真付きでご紹介したことがございました(既に5年以上も経っており…驚きです)。

かなり前から、現地で絵を描いたりスケッチをしたりする際の状況というのは”どんな風なのでしょうか?”といったお声があり、それを受けての掲載でしたので、当時ご好評を頂きました。

また、アトリエで絵を描く様子を見てみたい、というお話も時々伺うのですが、独りで自身の想像世界に没入して描く私の制作スタイルにおきましては・・・そればかりは、無理な相談というものです(笑)。

そこで、一枚の絵が仕上がってゆく様子を画像とともに掲載させて頂こうと思います。
絵筆を握っている間は集中を要する為、余裕がございません。1日の制作作業が終わった段階で(毎日ではないのですが)、画面を写真に残していってみました。

制作経過の一コマ一コマを後から見てみたいと、ある日ふと思い立ち、自身の後学の為に少々興味が湧いたこともあり・・・一石二鳥かなと考えて今回、新作「スプリトの花市」の原画制作時に行ってみたものが以下となります。

①別の紙に描いた下絵を参考にしながら、薄いブルーグリーン色で下地塗りを施したキャンバスに、パステルペンシルで大まかに下描きを始める。
②チャコールペンシルで、更に下描きを進めてゆく。(遠近法の線は、画面中央にいる女性に向かって伸ばしそこで焦点を結ぶようにした)
③光のあたっている所や明るい場所を、白く塗ってゆく。(“光”に最も重きを置いているので、一番初めに塗り始めることにしている)
④その後、影になっている部分を少し暗い色にしてゆく。
⑤花を描き始める前に、葉や茎の部分などへ先に色を置いてゆく。(この時点では、花をどのようにするか未だほとんど決めていない)
⑥絵の主役であるカラフルな花を、バランスや配置などを考えつつも、頭に浮かんだまま色を載せてゆく。(画面左の上部にある現実には丸かった外灯を、絵の雰囲気に合わせたデザインへとここで描き変えた)
⑦花の色調が決まると、ようやくパラソルへ彩色したり、花々などの上に光を入れたり…等々、描き進めることができる。
⑧主たる要素の部分に納得できたところで、影となる部分を濃くしてゆく。
⑨花の色彩などと共に細かい部分の描き込みを進める。(画面左側に座っている犬は当初レトリバー犬だったが、地面の色とあまりに同化してしまう為、この時点で白い犬(=白地に黒ブチのダルメシアン犬)に描き変える)
⑩光、空気感、雰囲気…といった漠としたものを描き進めてゆき、ストンと自分の中で落ち着く瞬間が来て・・・完成となる。(最終的に、画面左奥の女の子の服装も変えた)

【転載・コピー等厳禁】
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時間的な観点で、所要時間だけを比べてみますと、写真の①~⑨迄と、⑨~⑩の部分では、実は同じ位の時間がかかっています。
見た目の分かりやすい変化よりも、”雰囲気”や”空気感”といった気持ちの部分をキャンバス上に描いてゆくのは、やはりとても難しく、どうしても時間を要するものなのでしょう。

また、上の画像は全て小さなデジタルカメラで撮っておりますので、色調や色の強弱など現物とはかなり違っておりますし、見辛いところも多々ございますことご了承下さい。

毎作品、上記のような手順をふんでいるとも限りませんし、絵によっても、勿論、使う画材やサイズなどによっても進め方は都度変わってきます…今回は、概ね代表的なパターンとして紹介させて頂きました。

メイキング画像?とでも申しましょうか・・・お楽しみ頂けましたら幸いです。

笹倉鉄平

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