前回のつづきですが・・・

(前回のアトリエからのメッセージ <03/02/24> のつづきです)

ドイツ南部から、その後一路イタリアの地中海沿岸まで南下しました。
ドイツとイタリアの国境に横たわるアルプスの山脈地帯は、飛行機の上から実際に見下ろすと、地図で見るよりも高く険しく思え、見渡す限りの広大さにいつも驚いてしまいます。
気候が山脈をはさんで異なるのはもとより、文化、言語、風習などを隔てる大きな壁であることが実感できます。
少し前まで、真っ白な雪原や山々を見ていたのは幻だったのではと思えるほど、地中海沿岸では木々の葉はつややかな緑に輝き、ミモザの黄色い花々は満開、日差しは初夏を思わせるような色をもっていました。
その山脈越えで、いっきに3~4ヶ月があっという間に過ぎてしまったかのように感じ、”ついていけない…”と、体が訴えている気がするほどです。

イタリアへ来たのは、一昨年に訪れた街をもう一度違う季節に見てみたかったからです。
その時は、ずっと雨だったのですが、今回は気持ちの良い晴天が続いていたそうで、違う場所に来てしまったのではないかと思えるくらい、風景の印象も違っていました。
もう20日間ほどずっーと晴れていると、地元の人もにこやかに言っていました。

手袋をせずに活動できるのは、とてもありがたいことでしたが、夜が更けるまで長々と浜辺にいると、やはりそこはまだ3月…日が落ちるとぐんぐん気温が下がってしまいます。
あんなに寒かったドイツでは何でもなかったのに、気がゆるんでしまったのでしょう…少し鼻風邪をひいてしまいました。

その翌日のことでした。
浜辺の先端にある古い教会まで散歩をしていたら、砂浜の一角で、白い布に虹色の彩色を施している子供達に出会いました。
今日は日曜。教会でのミサが終わって、たくさんの人が小春日和の中思い思いの時間を過ごしている平和な景色です。
その傍らで、10人ほどの子供達がめいめいに楽しげに作業をしており、大人達は手を貸すこともなく、優しくにこやかにその様子を見守っていました。

中央にいた少女が持っていた虹色の旗には、白い文字で『PACE』と書かれています。
イタリア語で、”平和(PEACE)”のことです。
イタリアに入ってから、建物の多くの窓やバルコニーに吊るされた同じデザインの虹色の旗を本当にたくさん見かけました。
その意味するところは、ニュースなどを見ていてすぐに解りはしましたが、今は何も説明などいらないでしょう・・・。

小さなキャンバスに描いたスケッチ程度ではありますが、イタリアの小さな小さな街で、印象深かったこの光景をここに載せさせて頂きます。

笹倉鉄平

2003

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2003

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