アトリエから 2020一覧

年末と年始、二つの「ゴッホ展」

令和の新年が始動し、早半月。今年も、元旦から新しい作品に取りかかっています。

さて、先日まで上野の森美術館で開催されていた「ゴッホ展」を鑑賞しながら、ふと思い出したことがありました。

ゴッホの絵を初めて見たのは、中学の教科書でだったと思うのですが・・・当時の印刷物では、(撮影の際、絵具の盛り上がりや筆跡の影が濃く写ったからなのでしょう)筆の線がとても強く出ていたことで、絵も荒々しい感じだと思い込んでいました。

しかし、大人になってからパリのオルセー美術館で原画を初めて観た時・・・それまでは、実際以上に荒々しく大胆な印象を受けていたことに気づきました。つまり、原画を目の前にすると、配色や色使いはとても繊細で・・・ちょっと驚いてしまいました。以来、初見から持っていたゴッホ作品のイメージは一変したのです。

個人的には、南仏時代の作品が好きなのですが・・・中でも特に、サン・レミの診療所に入院していた時に描かれた作品に魅かれます。恐らくこの時期には、絵の制作だけに集中できていたのではないでしょうか。そんな絵たちと対峙していると「なんと絵に一途な人だったのだろう」と感じ入るばかりです。


前々回の続きになりますが・・・フランス・ボルドーから空路フランクフルト経由の帰途、乗り継ぎの時間がかなりあったので、市内のシュテーデル美術館へ行こうかと調べてみると・・・ラッキーにも「ゴッホ(Making Van Gogh)展」を開催中!!

ゴッホ独自の画風が完成してゆく中で、影響を受けたり・与えたりした画家達の作品も(画家自身の書簡、評論等と併せ)共に展示された大規模な企画展でした。上野の森美術館の展示と相通ずるところもあり・・・結果、世界各地の美術館に収蔵されているゴッホの肉筆原画を、奇しくも短期間でかなりの点数鑑賞できました。

両企画展とも、開催実現のために、ヨーロッパ各地やアメリカ等の美術館と出展交渉を重ね、貴重な作品の運輸手続きを行い、多くの方々を魅了する展示を成功させた主催者・美術館側のご苦労を思うと、溜息と共に頭が下がるばかりです。

[追記]
年頭からインスタグラムを始めてみました。一種の社会勉強とボケ防止(笑)と思いまして・・・。「アトリエから」との関連も考えてゆきつつ、無理なくマイペースの範囲でやっていこうと思っています

笹倉鉄平

2020年01月14日

「江戸の華」制作過程

暦の上では、既に春――今年は温かい冬だったせいか、例年の辛さも多少は楽な気がします。それでも、気温のアップダウンの激しさには驚かされておりますが・・・。

さて、新年を迎えてひと月が経ち、近づいて来る日本開催のオリンピックの話題も、ますます増えつつある昨今。楽しみに待つ自らの高揚感を絵にしてみたいと、昨年末に描いたのが、こちらの作品でした。

<制作過程 1 >
今夏の東京オリンピック、開幕を待つ気分を絵に表現したいと思い立ち、小さめのキャンバスに鉛筆でザッと下描きしたところです。"江戸は隅田の花火大会"が、今のワクワク感に通じるかなと考え、花火を見上げる浴衣女性の群像を描くことにしました。

<制作過程 2 >
実物を見ながら描いていない為、ボンヤリとしたイメージを頭の中で探しながら描き進めます。そのうち、段々と像が決まってゆく感じです。

<制作過程 3 >
全体の色イメージを掴みたいと思い、大まかに薄く色をつけてみたところです。下描きも色付けも、最初のうちはこんなに大雑把なのです。

<制作過程 4 >
花火がドーンと打ち上がって・・・その光を浴びる感じを出したいと思い、光の当たる所に白色を入れ、逆に影の部分は暗くしてゆきました。

<制作過程 5 >
明るめの色から、油絵の具を濃く塗り重ねてゆくところです。
人物の設定は・・・中央に日本人、その左右にはそれぞれ外国からの人にも見えてほしいな、と。後ろ姿であっても、寄り添い合って楽し気な様子は、"壁など無い"の象徴として美しいと思ったから・・・

<制作過程 6 完成 >
これで完成です。東京オリンピックが開かれる"2020年夏の花火大会"をイメージしてもらえるよう、浴衣とウチワは五輪公式グッズになんとなく近い雰囲気にしました。
世界中の人達が、和気あいあいと同じものを観て楽しむ姿から、平和をも感じて頂けましたら嬉しいです。

さて、絵のタイトルについて。女性も花火も、江戸の昔から「華」と謳われてきました・・・ので、「江戸の華」が良いんじゃないかと。このタイトル、結構気に入ってます(笑)。

「江戸の華」2019年 油彩 45.5×27.3cm

笹倉鉄平

【追記】前回、予告しておりました通り、1月からインスタグラムを始めております。実は、↑今回はそちらで回数を分けてアップしていた作品の制作過程を、少し形を変えてまとめてみました。

2020年02月13日

お知らせです

ありがたくも気にして下さっている方がいらっしゃると聞き、以下の件、簡単ですがお伝えしておこうと思います。

毎年、4月の上旬に横浜の「新都市ホール」という広い会場で展覧会を行って参りましたが…
昨今の社会状況を鑑み、今般その開催を見送らせて頂くことと致しました。

準備は全て完了しておりましたので、苦しい決断でしたが…楽しみにお待ち頂いていた方々には、どうかご了承をお願いしたく思います。"原画を実際にご鑑賞頂く"という、私自身にとりましても楽しみであり大切な機会が一つ減るということに、残念かつ複雑な心境を抱いております。

それでも、日々淡々と制作にまい進しておりますので、皆様にご覧頂きたい作品は生まれております。
大規模な展覧会につきましては、次の機会をお待ち頂きたく思います。

不便で不安な日々が去り、穏やかな日常が、一日も早く戻ることを心より祈っております。

笹倉鉄平

「八坂の塔」の為の習作
『疫病退散の念も担って建立された"八坂の塔"』

2020年03月02日

乗り越えるために・・・


前回ここを更新してから、2か月が過ぎようとしています。その間に、国の緊急事態宣言が発出され、命や社会や暮らしを守るために、それぞれが出来うる形での協力と努力を続ける日々が続いております。

G.W.に入りましたが、自身に関する部分ですと・・・多くの美術館やギャラリーが休業し、私の個展も開催を自粛し、事務所のアートテラスも4月初旬より休業をいたしております。

人の心を豊かにしてくれる文化的な諸活動が制限される、今の窮屈で息ぐるしい日々の中で、憂うことも多くあります。こんな不安でいっぱいの世の中にこそ、絵を観る人の心に、ほんの少しでも希望や夢やぬくもりを、と思うのですが――
美術館などで実物の絵画を観ることさえ出来ない状況に追い込む"ウィルス禍"という難敵に、歯がゆく心痛むばかりです。

ただ・・・そんな負の部分に囚われ・流されることこそ、画家になってから常に目標としている「心安らぐ絵を描く」という創作の活動に、一番あってはならないことだと言い聞かせながら・・・今、自分に出来ることを自問自答しながら・・・
やはり、真摯な想いで"絵を描く"ことに尽きる・・・と、筆をとる毎日です。

"ステイ・ホーム"の努力を続ける方々、そして、何より我々の日々の暮らしを支えるべく、休みも取れずに医療、看護等に従事して下さっている方々、ライフライン維持業務について下さっている方々のことを思い起こしつつ・・・
私も気持ちを奮い立たせて、今は(体力的には少々キツい)大きな作品に挑んでいる最中です。

この状態の終息後になってしまったとしても、この絵が、苦難を乗り越えた人の心に、安らぎや日常に宿る幸福感、希望の光などを届けられることを願いながら・・・・・・私は、"ステイ・アトリエ"で頑張ります。

笹倉鉄平



<スタッフより>
展覧会が出来ない今、せめて、本当にせめて、ではございますが、当HP内の「オンライン・ギャラリー」にて、"絵で旅する気分を!!"というテーマにて、絵の世界で旅気分を味わって頂ければ…と、ヨーロッパ北部12の国を描いた作品を展示いたしております。
また、1月からスタートしている笹倉鉄平のインスタグラムですが、そちらにも違う切り口で旅気分を楽しめるようなシリーズで作品がアップされております。
よろしければ、あわせてご覧頂けましたらと思います。


2020年05月01日

コロナ自粛後、初の個展です

暑中お見舞い申し上げます。
マスク装着も辛い今夏。例年以上に、身体も心も労りつつお過ごし下さいませ。

さて、個展情報ページが、約半年ぶりに更新されました。
思いもよらなかったコロナ禍で、私の個展も延期や中止が続いておりましたが、ようやくの開催です。

自分が画家になって30年近く、このような特異かつ不自由な社会状況になったことなど無論なかったのですが…
画家として、ずっと一番大事にしてきたことは"絵を観て下さる方々に安らぎを感じて頂く"こと。そして、不安感や不条理感にさいなまれる時にこそ、安らぎや希望を感じて頂ける時間をお届けする絵を描き活動してゆくことが、自分に与えられた仕事なのだと、改めて自分に問いかけております。

ただ…現在、飲食店をはじめ多くの業種の方々が、密を避け人を集めない努力をされています。
例年行っておりましたサイン会の開催につきましては、短時間にピンポイントで人を集めることにつながりかねませんので、見合わせざるを得なかったこと何卒ご了承下さい。毎年楽しみに待っていて下さる方々には、申し訳ございません。
私が会場におらずとも、"想い"をたくさんつめ込みながら1枚1枚長い時間をかけて描いた"絵そのもの"(肉筆画)が、多く会場に行くこと…勿論、それに勝ることはないと思いますので。

今回の大阪での個展では、特に海外への旅行がしずらい今、せめて絵で様々な(街あり海あり林あり…)景色に触れて、心をのびのびと解放する時間を楽しんで頂くことを目指しました。

今、色々な分野のアーティストやエンターテインメントの世界の方々が、大変な苦境の中にいます。それでも…工夫と努力でそれぞれに前を向いて進もうという姿勢に、絵描きである自分も大いに勇気をもらっています。
こんな時勢であっても、芸術や美術の火が決して衰えること無きよう、微力ですが頑張ってゆきたいと思っています。

笹倉鉄平

 

「夜空の花束」 油彩 2012年制作
花火大会の無い夏に。様々な思いを込めて見上げる百花…何を願いましょう。誰を想いましょう。

 

2020年08月07日

東京での個展です

『え?日本を描いた絵、50点もありますか?』
そんなお声も聞こえてきそうな、今回の個展です。

日本の風景を描いた絵のみを、この規模で展示させて頂く原画展、実は初めてです。
画家デビュー以来、ヨーロッパを旅する中で出会った風景を中心に創作してきましたが・・・
15年ほど前から、海外で個展を開催する度に、日本の美しい景色を紹介したくて描いてきた日本の情景作品が、少しずつ、また少しずつと増え・・・今般、50点を一堂に集めることが出来ました(小品やスケッチなど含めてではございますが)。

本来であれば、今年のこの時期は、ホスト国としての催行や応援などに一致団結して頑張った東京オリンピックを終えた後の、熱も冷めやらぬ頃であったはず。様々な想いと共に終わったであろうオリンピックの喜びや感動、充実感など「やっぱり日本てイイね」という気分を共有する場にしたいと、以前は考えていた"日本の絵"展でした。

そして、メインに据える1枚は富士山の絵にしようと決めて、令和初めての元旦から筆をとって描き始めたのが「日の出・富士・印象」でした。ところが、描いている最中の春から今回のコロナ禍となってしまったのです。その頃から、込める想いの形は変わってゆきました。日本人皆が、気持ちを一つに感染収束に向け努力する姿勢や頑張りにエールを送り、敬意を抱きつつ・・・日々キャンバスに向かったのです。

"日本は頑張れる、心を一つにして乗り越えてゆきたい"
そして、乗り越えた先に見る、明ける空と富士山と生まれ出(いず)る日を、希望の光と共に――

*     *     *

現在の社会状況の中で展覧会を行う複雑な心境は、前回の「アトリエから/コロナ自粛後、初の個展です」にも書かせて頂きました(重複しますので今回はふれませんが…)。

< 前回の「アトリエから」の内容は コチラ

感染拡大の影響で、本当に多くの業種・大勢の人々が様々に知恵をしぼり、多大なご苦労をされながら「密を避け人を集めない」努力をされています。短時間にピンポイントで人を集めることにつながりかねないサイン会は、当会場でも見合わせざるを得ません。
また、僕の絵のファンの方々の中には、医療に従事していらっしゃる方もとても多く・・・収束が見えず大変なご苦労の中にいらっしゃる方々へ感謝と敬意の念と共に、自分たちにも出来る範囲で拡大を広めないよう意識高く行動したい、と改めて感じる今日この頃です。

笹倉鉄平

「日の出・富士・印象」 油彩 2020年制作

 

2020年08月22日